1. 発見・化学名 ビタミンB2(B2)は,19世紀における動物の成長に不可欠な未知の微量因子の研究により,水溶性で熱に安定な成長促進因子として天然物から抽出・精製されました.初期には”ビタミンG”と呼ばれ,1927年に”ビタミンB2“と称されることになりました.後にいくつかの因子の複合体であることが判明しましたが,1933年にR. KuhnらによってネズミのB2欠乏症を治癒する物質として単離されました. 心臓の筋肉から”Cytoflavin”,卵白から”Ovoflavin”,乳漿から”Lactoflavin”,肝臓から”Hepaflavin”として種々の天然物から抽出,精製され,材料由来の命名が行われました.これらの物質はいずれも蛍光性の黄色色素であることからフラビンと名付けられましたが,合成などによる構造決定の結果に基づいて,1937年にリボフラビン(RF)という名称が正式に採用されました.光により分解されやすく,特にアルカリ性条件下での分解が顕著であり,分解によりルミフラビンを生じます.RFは橙黄色針状結晶で,水に可溶,アルコールに微溶,エーテルなどには不溶です. 通常,B2と呼ばれるビタミンは基本化合物である7,8-ジメチル-10-リビチルイソアロキサジンの構造を有するRFとともに,補酵素として働くフラビンモノヌクレオチド(FMN)およびフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)を指します.前者ではRFにリン酸が一つ結合しており,後者ではRFにアデニンが二つのリン酸を介して結合しています. 1. 欠乏症 ビタミンB2の欠乏症状は成長障害のほか,口唇炎,舌炎,脂漏性皮膚炎など皮膚や粘膜に炎症が生じます.ビタミンB2欠乏症は摂取不足のほかに多量の抗生物質,精神安定剤,副腎ホルモンなどが投与された時にもみられることがあります.B2は一定以上は吸収されない上に速やかに排泄されるので,過剰症は認められず,毒性は少ないビタミンです. 3. 生化学と生理作用 ビタミンB2については栄養学的研究と平行して研究の初期から酵素学的な面からの研究も進められました.すなわち,1932年には酸化反応を触媒する黄色酵素の黄色部分がリボフラビン-5′-リン酸(FMN)であることが明らかにされ,また1938年にはアミノ酸酸化酵素の補酵素部分がやはりB2誘導体の一つであることが推測され,1952年FADの構造が決定されました.生体内ではB2の大部分はこれらの補酵素型で存在しています. FMN,FADはそれぞれRFから細胞内で酵素,フラボキナーゼおよびFAD合成酵素により作られます.両者とも生体内の酸化還元反応を触媒する数多くの脱水素酵素や酸化酵素の補酵素として重要であります.B2が”発育ビタミン”ともいわれるように,特に発育に対する影響が顕著であるのは,このように糖質,タンパク質,脂質などの代謝に与る酵素の補酵素としてのB2の機能・生理作用によります. 4. 食事摂取基準と多く含む食品 ビタミンB2の推定平均必要量は,尿中に排泄されるB2量から,リボフラビン相当量として0.50mg/1,000kcalと算定され,推奨量は0.60mg/1,000kcal(推定平均必要量×1.2)と決められています.1日当たりの量に換算するには,推定エネルギー必要量を乗じて計算します.たとえば,18〜29歳の男性および女性で身体活動レベルU(ふつう)の場合の推奨量は,それぞれ1.6mg/日および,1.2mg/日です. ビタミンB2を多く含む食品として,日本食品標準成分表2010によるとブタ肝臓やウシ肝臓などの内臓類,脱脂粉乳,ドジョウ(生),塩サバ,納豆糸引きが挙げられます.